q-and-a

Q1:真珠養殖に使われる貝はどんなものがありますか?

A:真珠養殖に使われる貝は全部で6種類です。

日本で最も多く用いられるアコヤ貝のほか、シロチョウ貝、クロチョウ貝、マベ、アワビなど海に生息する貝5種類と、淡水産のイケチョウ貝が使われています。

Q2:どんな貝でも真珠はできるのですか?

A:いいえ。真珠と呼ばれる珠をつくることができる貝は、貝殻の内側が美しい輝きを有しているものだけです。

この美しい輝きを有する成分を「真珠質」と呼び、外套膜と呼ばれる部位によってつくられます。

外套膜が貝の中に入ってきた異物に反応すると、その異物を核に真珠がつくられます。

Q3:養殖真珠に入れる核は何でできているのですか?

A:主にアメリカのミシシッピ川やテネシー川流域に生息するイシガイ科の淡水二枚貝の貝殻が使われます。

かつては、この貝でシャツのボタンが作られていました。

Q4:養殖真珠はどのようにしてできるのですか?

A:真珠形成の原理は天然真珠と同じです。

ただし養殖真珠の場合は、外套膜と核を人の手で貝の体内に埋め込む「核入れ手術」をし、真珠ができるきっかけを与えます。

養殖の作業は次の順番でされます。

①抑制/初冬

かごいっぱいに貝を詰め込み、貝の生理活動を抑制します。

これにより、手術による過剰反応を少しでも和らげることができます。

②核入れ手術/主に4月下旬~6月上旬

真珠養殖で最も重要な作業のひとつで、貝の生殖巣に外套膜と核を入れます。

まず開口器で貝殻を少し開け、その隙間からメスで生殖巣の表面を少し切開し、他の貝から切り取った外套膜を2ミリ角ほどの大きさにした「ピース」を入れます。

続いて淡水産二枚貝の貝殻を丸く加工した「核」を挿入します。

この作業で最も重要なのは、核とピースを必ず密着させることです。

このふたつが離れてしまうと、核に沿って真珠質が形成されず、丸くて美しい真珠ができなくなってしまいます。

③養生(ようじょう)/6月

手術後の体力を戻す為、養生かごに入れて波風のない穏やかな海で約2週間から1カ月休ませます。

④沖出/8月~12月

体力が回復したころ、アコヤ貝を一つひとつ規則正しく横組の段ネットに入れ替えて、プランクトンが豊富な潮の流れの良い沖合の筏(いかだ)に吊るします。

その深さは季節や海の状況により異なりますが、だいたい海面から1~5メートルです。

⑤管理/通年

養殖期間中は常に貝や海の状態に気を配り、貝にとって最良の環境に保ちます。

  • 避寒作業
    アコヤ貝は海水温が10度を下回ると貝が死んでしまう確率が非常に高くなります。
    そのような場合は、温かい海水域へ筏を移動させます。
  • 貝掃除
    核入れされた貝は海中に吊るしておくと、その貝殻の表面にカキやフジツボ、ホヤ、海藻類が付着します。
    それらは貝の開閉運動の負担になったり、中には貝殻を突き破って中に寄生したりする虫もいるので、定期的に高圧洗浄機で除去します。
    それでも取りきれないものは貝掃除用の出刃包丁などを使って、手作業でこそぎ落します。
    貝掃除をひんぱんに行うことで貝に刺激を与え、貝の活動を活発化させ、真珠層形成を促進します。
    ⑥浜揚げ/12月~1月
    核入れした貝を12月から翌年の1月にかけて引き揚げ、真珠を取り出します。
    冬の時期は、分泌量は少ないながらも、真珠層の主成分である炭酸カルシウムが薄く大きく表層に形成されることで、真珠の輝きが増します。
    これを「化粧巻」といいます。
    その他、アコヤ貝そのものを培養する作業もあります。
    人口採苗といって、タンクの中で人工的に受精させるところから始め、およそ2年から3年かけて稚貝から母貝へ育てます。

Q5:養殖期間はどのくらいですか?

A:人口採苗から始めると、およそ4~5年です。

Q6:最高品質の花珠真珠ができる確率はどのくらいですか?

A:貝は核入れ手術後、養殖期間中にほぼ50%が死んでしまいます。

その理由は体力の消耗や手術のショック、また赤潮や台風、感染症などによる被害です。

残りの20%くらいの貝から出てくるものは質が低くて宝石としての価値がありません。

最後の30%ほどの貝から良品の真珠が生まれます。
その良品真珠のなかでも“花珠”と呼ばれる最高品質の真珠はわずか10%ほどしかできません。

Q7:真珠の成分は何ですか?

A:真珠は炭酸カルシウム約93%、タンパク質(コンキオリン)約4.5%で、残りは水分などです。

真珠層は、炭酸カルシウムの六角形の結晶が層状になってできています。

その結晶と結晶をつなぎとめる役割をしているのがコンキオリンという名のタンパク質です。

Q8:真珠の色はどのようにしてできるのですか?

A:一般的にアコヤ真珠で言えば、ピンク系、白系、黄色系、ブルー系の4つに大別できます。

大まかな比率は、ピンクになる確率が1だとしたら、白はその3倍から5倍、黄色は10倍です。

黄色が多い理由は、アコヤ貝のタンパク質は黄色い色素をもっていることが多いからです。

また、タンパク質が色をもたない場合があります。

このとき結晶層がほぼ同じ厚みで整然と積み重なると、入り込んだ光が規則的に反射する「多層膜干渉」という現象が起き、ピンク色の波長が特に強められるのです。

しかし、結晶層が不規則な場合、ピンクの波長は強まらないので、白く見えるというわけです。

またブルー系の真珠は、真珠袋の細胞が真珠層を分泌する前に堆積させた有機物によって作られます。

簡単に言えば、偶然に入った有機物が真珠層を通すとブルーに見えるのです。
つまり真珠の色とは、

①タンパク質

②光の干渉

③有機物

この3要素が複雑に関連し合って決まります。

そのため、色は20通り以上の色が考えられます。

Q9:重さの計測単位はなんですか?

A:真珠の重さは匁(もんめ)です。

1匁は3.75グラムです。

「匁」は真珠の取引における国際単位でもあり、英語表記はmommeとなります。

Q10:日本の真珠養殖の主な産地はどこですか?

A:アコヤ真珠の三大産地は愛媛県、長崎県、三重県です。

アコヤ真珠以外では、黒蝶真珠は沖縄県の石垣島や西表島、半円真珠(マベ)は鹿児島県の奄美諸島、淡水真珠は滋賀県の琵琶湖や茨城県の霞ケ浦で養殖が行われています。

Q11:真珠の取引はどのように行われているのですか?

A:ほとんどの場合、生産者が育てて浜揚げ・収穫した真珠は、12月から2月の入札会で取引されます。

Q12:真珠養殖を成功させたのは誰ですか?

A:世界で初めて真珠の養殖に成功した人物は、御木本幸吉です。

幸吉は1858(安政5)年、鳥羽のうどん屋「阿波幸」の長男として生まれました。

幼い頃より野菜の行商をするなど、商人として多くの経験を積む中で、20歳になるのを機に出かけた東京、横浜への視察旅行で真珠と運命的な出会いを果たします。

その後、第日本水産会幹事長・柳梄悦氏や東京帝国大学の箕作佳吉(みつくり かきち)博士との交流を通じて真珠の養殖を志します。

数多くの困難を乗り越え、1893(明治26)年7月11日、鳥羽の相島(現ミキモト真珠島)で世界発の真珠養殖に成功したのです。